「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT in AnimeJapan」公式レポート
2015年3月21日(土)、日本最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2015」にて、
「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT in AnimeJapan」と題したトークショーを開催しました。
1989年に士郎正宗氏が漫画作品を発表して以来、映画、テレビシリーズ、OVAとして映像化されてきた「攻殻機動隊」。情報ネットワークとサイボーグ技術の発達によって人々の意思が“電脳”で繋がれた未来社会を舞台にしたこの作品は、25年以上も世界中のファンを魅了しています。
「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT」は、日本を代表する企業、大学の研究開発者、公共機関など、産学が一体となって、「攻殻機動隊」の世界をリアルに作ろうという壮大なプロジェクト。
第一回目は、2014年11月に「NTTドコモ・ベンチャーズDay」にて、「光学迷彩」、「電脳」、「義体」など、作品に関係の深い技術を研究する識者が議論を交わしました。
第二回目となる今回は、人間と機械が融合した「人機一体」の新たなスポーツを創造するために発足した「超人スポーツ協会」のメンバーと、小説家で「攻殻機動隊 新劇場版」の脚本や「攻殻機動隊 ARISE」シリーズ構成・脚本を担当している冲方丁氏が登壇。「義体」や「テクノロジーの進化・日常化」などをテーマにトークセッションが行われました。
「『攻殻機動隊』にヒントを得て光学迷彩を開発した」という稲見昌彦氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)は、「人機一体に必要な技術や、攻殻機動隊の世界を実現するための技術がだんだんリアルになってきている。日本の強みは『ポップカルチャー』の力強さと、『技術』が尖っていること。この2つが独立に存在するのではなく、お互いに影響を及ぼし合っています。ポップ化とテクノロジーをキーポイントに今後も研究を深めていきたい」と意欲を燃やしました。
義足エンジニアの遠藤謙氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所アソシエイトリサーチャー/株式会社Xiborg代表取締役)は、「義足開発の研究をしています。
今、パラリンピックの100メートル走の最速タイムは10.57秒。ウサイン・ボルトの記録が9.58秒なので1秒ちょっとオリンピックの方が速い。
今後の目標は2020年のパラリンピックの100メートル走で、優勝タイムがオリンピックを上回ること」と発言。
また、「技術が進むことによって障害という概念の敷居が下がり、障害者か健常者かわからないという世界観はあると思う。その先に『攻殻機動隊』の義体化が結びつくような気がしています」と可能性を示唆しました。
遠隔地にあるロボットやドローンを自分の分身のように操る技術「テレイグジスタンス」を研究している
南澤孝太氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科准教授)は、
「サイボーグ技術やパワーアシスト技術など人間の身体を拡張できるようなテクノロジーで新しいスポーツを考える『超人スポーツ』のフィールドは、ゼロから新しいものを立ちあげられる領域です。みんなのアイデアでスポーツをデザインしてみんなでプレイして楽しむ。新しいスポーツの形を生み出して実現していきたい」と「超人スポーツ協会」の意義を語りました。
冲方丁氏は、「攻殻機動隊ARISEを作る時に『テクノロジーをどう描くことが今のリアリティなのか』を一番議論した。ビジュアルインパクトではなくテクノロジーの吸収です。昔はSFのビジュアルだったスワイプを、今は小学生ができている時代。実現不可能と言われていたものが現実となり、SFにかつてのようなインパクトがなくなってしまいました」と、フィクションとリアルが近づいてきたことを指摘。
「超人スポーツ協会」のメンバーとのセッションを終え、「最先端のテクノロジーを知り、想いを汲みつつ斜め上をいかなければいけない。皆様に新たな刺激を与えられるものを作っていけるか、大きな宿題をもらった」と話しました。